Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

     “初夏の使者といえば?”
 


今年は春に限らず季節が駆け足な年なようで。
桜が前倒しで咲いた割に、
気を取り直したかのように気温が乱高下した四月だったのを、
一気に駆け抜けた感のあった春は短くて。
そのまま突入したGWがまた、
初夏を通り越してもう夏かと思わせるような
とんでもない気温を記録しまくり。
いくらなんでももう要らないだろうと、
上着やこたつを仕舞わせたほどの夏日が続いたかと思いきや、
やっぱりそうだったのねという肌寒さが舞い戻り。

 「よくよく考えたら、
  そう簡単に次へ移行しないのは例年のことなのにな。」

 「…まぁな。」

だっていうのに、何で毎年振り回されているかなと言いたげな幼子の言いようへ、
幼子だからこそいちいち怒るのは大人げないと思いつつ、
視野いっぱいに広がるグラウンドを、ぐるりと見回す葉柱で。
まずはと体を温めるための、サーキットトレーニングをこなしたところ。
特に息も乱れてはない余裕の態のまま、
首にかかったタオルでこめかみや首条を流れ落ちる汗を拭う男臭さに、
新入生の女子マネらが、
思わずだろう頬を染めつつも見惚れているのが何とも初々しいが、

 「なんだ、もうノルマは終えたのかい?」

よく通る声がしたのへ我に返ると、どこかそそくさという態度。
まだ部内の様子を把握しきっていないが故の、
ちょっとした、そう、可愛らしい齟齬のようなものがあるらしく。
ただサボっていたと叱られるだけじゃない、
もしかして主将と露峰先輩とは“特別な間柄”なのに
ぽーっとなってるんじゃないとかどうとか、
余計な嵐を呼び込まないかという勘違いも加わっての反応らしくって。

 “もちょっとしたらば、
  そんな怖い人じゃあないってのも判るんだろうけど。”

さばけた性格のメグさんは、
冴えた美貌からそういう誤解を受けやすく、
更に言えば、
彼女は葉柱つながりの、だがだが、兄貴の方と恋仲なのであり。

 “だよな…。”

そういう邪推を恐れにゃならぬのは、別の相手だろにと、
いやまあ それはともかくとして。(笑)

 「差し入れを持って来てあるんだよ。
  冷やしてあるから切りのいいところで順番に食べとくれ。」

そうと言った彼女の手でベンチへ置かれたのは、
小ぶりな方のクーラーボックスで。
わあなんだろと、
好奇心旺盛な子供を装った小さな軍曹さんが
蓋をパカリと開けるとそこには、

 「わ、ビワだvv」

淡い橙という柔らかそうな色味をした、
卵形の果実が、角の取れた氷と一緒にたっくさん収まっている。

 「ウチの親戚から届いたんだよ。」
 「うわぁvv」

いつぞやに妖一くんもお呼ばれして梨をもいだ、
あの梨園を営んでいらっしゃるおばさまとは別口のお宅らしく、

 「ほら、ボウルに取り分けて、他の面々にも配っといで。」
 「はいっvv」

勿論のこと、女子マネの皆さんにも水分補給だと勧めておいで。

 「すごいねぇ、メグおねえちゃんvv」

新鮮も新鮮、甘みも上等なビワなのを、
意外にも器用な葉柱に剥いてもらって、
まずはと頬張った子ヒル魔くんが感心をし。
まさかに、美味しいものがたくさん食べられてと、
そこいらの小学生のような言いようはしなかろと。
それでも何が続くものかと、
遅ればせながらメニューを終えた面々が
傍らへ集まりつつ耳をそばだてていたならば、

 「果物いっぱい食べてるから、いつもキレェなんだねぇvv」
 「おや、言うねぇ。」

さすがに、それこそ初心なネンネじゃあるまいしで
やぁんと赤くなったりはしなかったものの、
それでも女性で嬉しくはあったのだろう。
金髪坊やの言いようへ、
見るからにという華やかな笑顔を見せたメグさんだったので、

 “そかー、ああいうときは特に飾らない言いようがベストなのかぁ。”

周囲の年上な顔ぶれがお勉強させられていたりして。(笑)
明るい陽の下、どこからともなく飛んで来たツバメが、
皆の頭上へ素早く影を降らせ、
アジサイやユリのお顔がからりとした風に揺れる、
そんなさわやかな初夏の昼下がりでした。


     〜Fine〜  15.06.08



 *気温の乱高下が激しくて、
  あんなに暑い昼だったのが、
  朝晩急に冷えたので、
  またまた重い布団を引っ張り出しとります。
  そんなだというに、昨日は蚊に食われもしと、
  何だかややこしい初夏です、はい。


ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv  

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